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のら猫が様々な毛色の子猫を産むのはなぜ?

猫は、学校の生物で習った「遺伝の法則」では説明がつかないほど、多彩な毛色の子猫を同時に生み落とします。その背景にある、猫の驚くべき「繁殖戦略」とは?

物事が、想像を超えて増加・拡大する様子を表す言葉に、「雪だるま式」と「ねずみ算式」というものがあります。


「雪だるま式」は、雪だるまを作る際、小さな雪の塊を転がしていくと、周囲の雪がどんどん付着して大きくなる様子に由来し、「借金が雪だるま式に膨らんだ」というように使われます。

 

一方、「ねずみ算式」は、「雪だるま式」を遥かに越え、少数のものが短期間で爆発的に増える場合に使われることが多いようです。「変異株ウイルスの感染者は、ねずみ算式に増えていった」といった具合です。

 

そもそも「ねずみ算」って何?

 

実は、「ねずみ算」とは、江戸時代の数学書『塵劫記』に登場する、「計算問題」の名称です。で、その問題はというと…。

 

『正月にネズミのつがいが1組現れ、12匹の子を産む。2月には、その子ネズミたちも、また子を12匹ずつ産む。毎月このようにネズミが増えていくと、12月には何匹になるか?』

 

というものです。そして、答えは、ナント 276億8257万4402匹!

このように、「ねずみ算」とは、幾何級数的な増加を計算する問題のことなのです。

 

なぜ、「ねずみ」なの?


では、なぜこのような計算問題が、「ねずみ算」と呼ばれるようになったのでしょうか?

それは、当時からネズミは、非常に繁殖力が高い動物として知られており、急激に数が増えることの比喩として使われるようになったようです。

 

実際、ハツカネズミは、計算上、2匹のつがいが1年で、なんと約10、000匹にまで増加します。恐ろしい繁殖力ですね⁉

 

ですが、なぜ、ハツカネズミはこれほどまで爆発的に繁殖することができるのでしょう?

 

それには、①短い発情周期(約4~6日という周期で、1年中繰り返される)、②多産性(平均5~10匹の子を産む能力)、③産後発情(出産後、約24時間以内に再び妊娠が可能になる)など、様々な要因がありますが、特筆すべきは、④「妊娠期間の短さ」です。

 

ハツカネズミは、妊娠からわずか20日前後で子を出産するため、それが「ハツカネズミ」の名前の由来ともなっています。

 

短期間で効率的に個体数を増やし、環境変化や捕食者からのリスクに対応する。それが、ハツカネズミの【繁殖戦略】なのです。

 

猫の【繁殖戦略】とは?


では、猫の【繁殖戦略】は、一体、どのようなものなのでしょうか?

 

猫は通常、生後4~12ヶ月で子猫を産めるようになり、年に2~4回出産し、1回に4~8頭の子猫を産みます。

 

そのため、1組のつがいが、1年後には約20頭、2年後には約80頭、そして3年後には約2,000頭にまで増えるといわれています。(環境省「もっと飼いたい?」より)

 

ものスゴイ繁殖力ですが、正直、ハツカネズミと比較すると、やや見劣りしますね。 

それを補うための戦略の一つが、「交尾誘発排卵」というものです。

 

人間を含む多くの哺乳類は、一定の周期で自然に排卵を行う「自然排卵」です。しかし、猫は、メス猫がオス猫との交尾の刺激を受けて、初めて排卵する「交尾誘発排卵」を行います。

 

「交尾誘発排卵」のスゴイところは、排卵すれば、ほぼ100%、受精する点です。これにより、交尾の機会が限られた環境でも、確実に妊娠できる可能性が高まるのです。


「多父性」って何?

 

そして、もう一つ、非常にユニークな戦略が「多父性」です。

 

猫は「交尾誘発排卵」を行うので、メス猫が発情期間中に複数のオス猫と交尾すると、交尾のたびに排卵します。そして、それぞれのオスの精子が、各卵子を受精させます。

 

その結果、母猫は、父猫の違う複数の子猫を、一度の出産で産み落とすことになるのです。

 

これが、同じ母猫から、黒・白・三毛・トラ・さび・ぶちなど、様々な毛色を持つ子猫たちが、同時に生まれる所以です。

 

猫は、この「多父性」によって、より優秀な遺伝子をもつオス猫の子孫を産み、子猫が異なる環境に適応する可能性を向上させています。こうして、次世代への遺伝子の質を高めることが、猫の繁殖戦略なのです。

 

一見、兄弟姉妹だとは思えないほど、様々な「毛色」の子猫たちが生まれてくる背景には、猫の、このような【繁殖戦略】が隠されているのです。


2024年12月

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