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のら猫が様々な毛色の子猫を産むのはなぜ?

  • 執筆者の写真: 琴森 美香子
    琴森 美香子
  • 2024年12月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:7月22日

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猫は、生物の授業で習った「遺伝の法則」で説明がつかないほど、多彩な毛色の子猫を同時に出産します。それはなぜでしょうか?

物事が、想像を超えて増加・拡大する様子を表す言葉に「ねずみ算式」というものがあります。これは、少数のものが短期間で爆発的に増える場合に使われることが多く、「変異株ウイルスの感染者は、ねずみ算式に増えていった」といった具合に使われます。

 

そもそも「ねずみ算」って何?

 

では、ここでいう「ねずみ算」とは何でしょうか? 実はこれ、江戸時代の数学書『塵劫記』に登場する「計算問題」の名称です。で、その問題はというと…。

 

『正月にネズミのつがいが1組現れ、12匹の子を産む。2月には、その子ネズミたちも、また子を12匹ずつ産む。毎月このようにネズミが増えていくと、12月には何匹になるか?』

 

というものです。そして、答えは、ナント 276億8257万4402匹!

このように、「ねずみ算」とは、幾何級数的な増加を計算する問題のことなのです。

 

では、なぜ「ねずみ」なの?


では、なぜこのような計算問題は、「ねずみ算」と呼ばれるのでしょうか? それは、当時からネズミは、非常に繁殖力が高い動物として知られており、急激に数が増えることの比喩として使われていたからです。

 

たとえば「ハツカネズミ」は、計算上、2匹のつがいが1年で、なんと約10、000匹にまで増加します。恐ろしい繁殖力ですね⁉

 

では、なぜ、ハツカネズミはこれほど爆発的に繁殖できるのでしょうか? それには、

①短い発情周期(約4~6日という周期で、1年中繰り返される)

②多産性(平均5~10匹の子を産む)

③産後発情(出産後、約24時間以内に再び妊娠が可能になる)

④妊娠期間が短い

など、様々な要因がありますが、特筆すべきは、④「妊娠期間が短い」ということです。

 

ハツカネズミは、妊娠からわずか20日前後で出産し、それが「ハツカネズミ」の名前の由来ともなっています。短期間で効率的に個体数を増やし、環境の変化や捕食者からのリスクに対応する。それが、ハツカネズミの【繁殖戦略】なのです。

 

猫の【繁殖戦略】とは?


では、猫の【繁殖戦略】は、一体、どのようなものなのでしょうか?

 

猫は通常、生後4~12ヶ月で子猫を産めるようになり、年に2~4回出産し、1回に4~8頭の子猫を産みます。そのため、1組のつがいが、1年後には約20頭、2年後には約80頭、そして3年後には約2,000頭にまで増えるといわれています。(環境省「もっと飼いたい?」より)

 

ものスゴイ繁殖力ですが、ハツカネズミと比較すると、かなり見劣りしますね? それを補うための戦略の一つが、「交尾誘発排卵」というものです。

 

人間を含む多くの哺乳類は、一定の周期で自然に排卵する「自然排卵」です。しかし、猫は、メス猫が交尾の刺激を受けて排卵する「交尾誘発排卵」を行います。

 

「交尾誘発排卵」のスゴイところは、排卵すれば、ほぼ100%、受精する点です。これにより、交尾の機会が限られた環境でも、確実に妊娠できる可能性が高まるのです。


「多父性」って何?

 

そして、もう一つ、非常にユニークな戦略が「多父性」です。

 

猫は「交尾誘発排卵」を行うので、メス猫が発情期間中に複数のオス猫と交尾すると、交尾のたびに排卵します。そして、それぞれのオスの精子が、各卵子を受精させます。

 

その結果、母猫は、父猫の違う複数の子猫を、一度の出産で産み落とすことになるのです。

 

これが、同じ母猫から、黒・白・三毛・トラ・さび・ぶちなど、様々な毛色を持つ子猫たちが、同時に生まれる所以です。

 

猫は、この「多父性」によって様々なオス猫の子を産み、その中で、より優秀な遺伝子をもった子猫が生き残り、次世代への遺伝子の質を向上させる可能性を高めています。これこそが、猫の【繁殖戦略】なのです。

 

一見、兄弟姉妹だとは思えないほど多様な「毛色」の子猫たちが生まれてくる背景には、猫という種の、高度な【繁殖戦略】が隠されているのです。


2024年12月

 
 
 

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